リサーチトピック

  • ホーム
  • リサーチトピック
  • 【FIBER】先端生命工学研究所の核酸のらせん構造と遺伝子発現に関する論文が米国化学会の高インパクト学術誌「Accounts of Chemical Research」掲載されました

リサーチトピック

【FIBER】先端生命工学研究所の核酸のらせん構造と遺伝子発現に関する論文が米国化学会の高インパクト学術誌「Accounts of Chemical Research」掲載されました

2021/03/05

このたび、甲南大学先端生命工学研究所(FIBER)の高橋俊太郎准教授と杉本直己所長・教授が執筆した、核酸のらせん構造が遺伝子発現に及ぼす化学的特性に関する論文が米国化学会の学術誌「Accounts of Chemical Research」誌に採択され、発刊に先立ちオンライン版が掲載されました。

遺伝物質であるDNAやRNAといった核酸分子は鎖状の分子で、二重らせんをはじめとするらせん構造を形成します。このようならせん構造は、核酸分子の塩基と呼ばれる部分が互いに対をなすように結合すること(塩基対)で形成されます。二重らせん構造は1953年にワトソンとクリックが提唱した構造で、その塩基対はワトソンクリック型塩基対と呼ばれています。一方で、1959年にフーグスティーンが発見したフーグスティーン型塩基対と呼ばれる別の塩基対構造も見つかっています。フーグスティーン型塩基対によって核酸分子は三重らせんや四重らせんなどの非二重らせん構造を形成します。近年、非二重らせん構造の生体内での役割が明らかになりつつあり、塩基対形成のメカニズムの解明が望まれています。

FIBERはこれまで非二重らせん構造の形成を定量的に解析し、核酸周囲の分子環境と遺伝子発現の関係性を世界に先駆けて明らかにしてきました。今回、高橋准教授と杉本所長・教授がこれまでFIBERで行った非二重らせん構造に関する研究内容を中心に、細胞内でのワトソン-クリック型塩基対とフーグスティーン型塩基対の振る舞いを化学的に取り扱いました。それにより、生命はワトソン-クリック型塩基対で遺伝情報を保持する一方、フーグスティーン塩基対で遺伝情報の発現を細胞内環境に応じて制御していることが示唆されました。現在の遺伝子の働きに関する一般的な解釈は、ワトソンクリック型塩基対による二重らせん構造のみに則したものであります。そのため今回の発表は、ワトソンとクリックによる遺伝子の概念を超越する概念として今後の遺伝子研究の新常識となる可能性があります。本内容は米国化学会の学術誌「Accounts of Chemical Research」誌のオンライン版として掲載されました。本誌は化学や生化学分野において特色ある研究成果や新概念を紹介する論文が掲載されています。本誌のインパクトファクターは20.832 (2019年)であり、化学系ジャーナルでも高い影響力をもつNature Chemistry誌(21.687)、Journal of the American Chemistry Society誌(14.612)やAngewandte Chemie International Edition誌(12.959)と同等、あるいはそれ以上であり、国際的注目度が極めて高いジャーナルです。FIBERの研究成果が本紙に掲載されたことから、FIBERの独自な核酸研究のみならず、そのコンセプトや動向に対して国際的な注目が高まってきています。

【Accounts of Chemical Research誌の掲載号】

Accounts of Chemical Research誌へのリンクはこちらです。

【掲載された論文】

Watson–Crick versus Hoogsteen Base Pairs: Chemical Strategy to Encode and Express Genetic Information in Life
S. Takahashi and N. Sugimoto, Acc. Chem. Res., 54, (2021) in press

先端生命工学研究所(FIBER)は、今後も生命化学分野における研究開発を通じて、科学技術の振興と研究成果を通じた社会還元に寄与してまいります。