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【FIBER】先端生命工学研究所の研究成果が英国核酸科学誌「Nucleic Acids Research」2020年12月2日号の表紙に選定され、論文が掲載されました

2020/12/07

このたび、先端生命工学研究所(FIBER)杉本直己所長とDipanwita Banerjee博士研究員、建石寿枝准教授らの研究グループは、核酸医薬やゲノム編集技術の開発に重要なDNA/RNAハイブリッド(DNAとRNAから成る二重らせん構造)の安定性を予測する手法を開発しました。この研究成果は、英国核酸科学誌「Nucleic Acids Research」の2020年12月2日号の表紙に選定され、論文が当該号に掲載されました。

生体内で遺伝子として用いられる核酸(DNA:デオキシリボ核酸、RNA:リボ核酸)の標準的な構造は、二重らせん構造です。核酸はアデニン、チミン(RNAはウラシル)、グアニン、シトシンの四種類の塩基を持つヌクレオチドからなる鎖状高分子で、アデニンとチミン(RNAはウラシル)、グアニンとシトシンがそれぞれWatson-Crick型の塩基対を形成し、二重らせん構造を形成します。DNAとRNAから成る二重らせん構造は、RNA / DNAハイブリッドとよばれています。RNA / DNAハイブリッドの安定性は、核酸医薬として注目されているアンチセンスオリゴヌクレオチドや、今年のノーベル化学賞として選定されたゲノム編集技術で注目されているCRISPR-Cas9の効率を決める重要な指標となるため、標的遺伝子内におけるRNA / DNAハイブリッドの安定性の予測する手法が開発されてきました。二重らせん構造の安定性は塩基対の組み合わせとその直近の塩基対の影響によって決まるNearest-Neighborモデルが広く受け入れられており、配列情報から安定性を予測することができます。しかし、細胞内環境ではDNAやRNAの安定性は大きく変化し、これまでの予測法では正確なRNA/DNAハイブリッド二重鎖構造の安定性を予測することはできませんでした。

本研究において杉本所長らの研究グループは、細胞内に近い溶液環境で、RNA/DNAハイブリッドの安定性を予測するNearest-Neighborパラメータを新たに開発しました。開発したパラメータを用いて、CRISPR-Cas9の標的遺伝子とのRNA/DNAハイブリッドの安定性を解析したところ、ゲノム編集で最大の効率を発揮する標的遺伝子の配列を、RNA/DNAハイブリッドの安定性から予測できることが示されました。本研究成果は、遺伝子発現を制御する核酸医薬の開発において、非常に有用であると考えられます。

先端生命工学研究所(FIBER)は、今後も生命化学分野における研究開発を通じて、科学技術の振興と研究成果を通じた社会還元に寄与してまいります。

【Nucleic Acids Researchの掲載号】

Nucleic Acids Researchへのリンクはこちらです。

【掲載された論文】

Improved nearest-neighbor parameters for the stability of RNA/DNA hybrids under a physiological condition   (Dipanwita Banerjee, Hisae Tateishi-Karimata, Tatsuya Ohyama, Saptarshi Ghosh, Tamaki Endoh, Shuntaro Takahashi, Naoki Sugimoto, Nucleic Acids Res., 48, 12042–12054 (2020))