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【FIBER】先端生命工学研究所の四重らせん核酸の水和に関する国際共同研究論文が米国化学会「Analytical Chemistry誌」に掲載され、掲載号の表紙(Supplemental Cover)に選出されました。

2022/06/01

このたび、甲南大学先端生命工学研究所(FIBER)の松本咲特任助教、髙橋俊太郎准教授、杉本直己所長・教授らとインドCalcutta大学との国際共同研究論文が米国化学会「Analytical Chemistry誌」に掲載され、掲載号の表紙(Supplemental Cover)に選出されました。

水中に溶けている分子は、水分子が取り囲むように相互作用(水和)することにより溶液中で安定に存在します。分子と分子が結合する際には表面の水和が除かれるなど、水和の変化が起こります。細胞内のように様々な分子が高濃度に溶け合っている環境(分子クラウディング環境)では、水和が変化し、分子同士の相互作用も変化します。核酸(DNAやRNA)は標準的な二重らせん構造以外にも四重らせん構造を形成することで、遺伝子の発現レベルを調節するなどの役割があることが近年明らかになってきました。これまでの研究でFIBERでは核酸の四重らせんに結合して遺伝子発現を制御する化合物の開発を進めてきましたが、四重らせんに関する水和のメカニズムは未だ不明でした。

今回の研究では、FIBERの松本特任助教、高橋准教授、杉本所長・教授らはインドCalcutta大学のSudipta Bhowmik博士と共同で、グアニン四重らせん構造の水和量を、高圧力を用いた熱力学解析と分子動力学シミュレーションを組み合わせて測定しました。その結果、グアニン四重らせん構造はその末端部と中央部とで水和量の偏りがあり、中央部の水和量が少ないことが見出されました。それにより、中央部に結合する化合物は水和の影響をあまり受けない結合様式を示すことが推測されました。実際に、抗生物質の一種で、グアニン四重らせんの中央部に結合するnetropsinの結合を解析したところ、netropsinの結合挙動には分子クラウディング環境の影響を受けないことが示されました。このように、化合物が細胞内でグアニン四重らせんにどのように結合するかを予測する手法はこれまで例が無く、今回の解析法を活用することで新しい薬剤などの開発の発展が期待できます。

なお、本研究は日本学術振興会研究拠点形成事業(JSPS Core-to-Core Program)の研究プロジェクトの一環としても行われました。

【Anal. Chem.誌の掲載号】 Anal. Chem.誌へのリンクはこちらです。

【掲載された論文】” Volumetric Strategy for Quantitatively Elucidating a Local Hydration Network around a G-Quadruplex”
・S. Matsumoto, S. Takahashi, S. Bhowmik, T. Ohyama, and N. Sugimoto
Anal. Chem., 94, 7400-7407(2022)

先端生命工学研究所(FIBER)は、今後も生命化学分野における研究開発を通じて、科学技術の振興と研究成果を通じた社会還元に寄与してまいります。