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【FIBER】先端生命工学研究所の研究成果が英国核酸科学誌「Nucleic Acids Research誌」2019 年4月23日号の表紙に選定され、論文が当該号に掲載されました。

2019/04/23

 このたび、先端生命工学研究所(FIBER)杉本直己所長とGhosh SAPTARSHI博士研究員、高橋俊太郎講師らの研究グループは、細胞内のような分子で混雑した環境(分子クラウディング)におけるDNA二重鎖構造の安定性を予測する手法を開発しました。この研究成果は、英国核酸科学誌「Nucleic Acids Research誌」の2019年4月23日号の表紙に選定され、論文が当該号に掲載されました。

 生体内で遺伝子として用いられる核酸(DNA:デオキシリボ核酸、RNA:リボ核酸)の標準的な構造は、二重らせん構造です。DNAはアデニン、チミン、グアニン、シトシンの四種類の塩基を持つヌクレオチドからなる鎖状高分子で、アデニンとチミン、グアニンとシトシンがそれぞれWatson-Crick型の塩基対を形成します。二重鎖構造の安定性は塩基対の組み合わせとその直近の塩基対の影響によって決まるNearest-Neighborモデルが広く受け入れられており、配列情報から安定性を予測することができます。しかし、細胞内のような分子クラウディング環境ではDNAの安定性は大きく変化することから、そのような環境下においては二重鎖構造の安定性を予測することはできませんでした。
 今般、杉本所長らのグループは、ポリエチレングリコールを利用した分子クラウディング環境で、DNA二重鎖の安定性を網羅的に解析しました。それにより、Nearest-Neighborモデルが分子クラウディング環境においても成り立つことを見出しました。さらに、分子クラウディング環境下に特化したNearest-Neighborパラメータを新たに提案し、実際に分子クラウディング環境下でのDNA安定性が正確に予測できることを証明しました。
 本研究成果は、細胞内でDNAが二重鎖構造を形成したり解離したりする反応メカニズムの解明や、遺伝子発現を制御する核酸医薬の開発において、非常に有用であると考えております。

 先端生命工学研究所(FIBER)は、今後も生命化学分野における研究開発を通じて、科学技術の振興と研究成果を通じた社会還元に寄与してまいります。

【Nucleic Acids Researchの掲載号】
Nucleic Acids Researchへのリンクはこちらです。

【掲載された論文】
Validation of the nearest-neighbor model for Watson–Crick self-complementary DNA duplexes in molecular crowding condition
(S. Ghosh, S. Takahashi, T. Endoh, H. Tateishi-Karimata, S. Hazra, and N. Sugimoto, Nucleic Acids Res., 2019, 23, 3284)