リサーチトピック
リサーチトピック
【FIBER】先端生命工学研究所の人工知能(AI)を用いた核酸酵素の設計に関する総説が英国王立化学会誌「RSC Chemical Biology誌」に掲載され、掲載号の表紙に選出されました
2025/11/14
このたび、甲南大学先端生命工学研究所(FIBER)の髙橋俊太郎准教授、建石寿枝准教授および杉本直己特別客員教授と早稲田大学との共同研究グループは、人工知能(AI)を用いた核酸酵素の設計についての総説が英国王立化学会の「RSC Chemical Biology」誌に掲載され、雑誌の表紙(Inside Front Cover)に選出されました。
核酸(DNAやRNA)は遺伝子情報を保持、発現する分子として働くだけでなく、タンパク質のような酵素活性を示すことができます。そのようなDNAzymeやRNAzymeと呼ばれる核酸酵素は、細胞内の核酸を操作する医薬品や、イオンや重金属の検出などへの応用が期待されています。一方で、これらの核酸酵素の活性は、周囲の環境に大きく依存することから、設計した核酸酵素から期待される機能が完全に発揮されないことが問題です。FIBERの研究グループは、これまで細胞内でのDNAやRNAの構造安定性を配列から予測する手法を開発してきました。今回発表した本総説では、これらの独自の構造安定性予測が、細胞内で望みの活性を示すことができる核酸酵素を設計するのに重要かつ有望なツールとなることを解説しました。さらに、甲南新世紀戦略プロジェクト(第I期)「非ワトソン-クリックワールドの核酸化学の確立と国際核酸化学研究拠点の形成」の共同研究者であり、核酸のバイオインフォマティクスをご専門とする早稲田大学の浜田道昭教授と共著で、これらの構造予測のAIによる活用により、効果的に核酸酵素をデザインできる展開についても議論しました。本総説の内容は今後の医薬や分析分野の発展において重要な指針となることが期待されます。
本発表は甲南新世紀戦略プロジェクト(第I期)に関する研究成果です。また、日本学術振興会科学研究費助成事業((21K05283、22H04975、24K01631))、 日本学術振興会研究拠点形成事業、公益財団法人伊藤忠兵衛基金ならびに公益財団法人旭硝子財団研究助成の支援の下に行われました。
【 RSC Chemical Biology誌 が掲載された雑誌のホームページ】

【RSC Chemical Biology誌】に掲載ページのリンクはこちらです。
【掲載された論文】
S. Takahashi, M. Hamada, H. Tateishi-Karimata, and N. Sugimoto, RSC Chemical Biology, 6, 1667-1685 (2025)
先端生命工学研究所(FIBER)は、今後も生命化学分野における研究開発を通じて、科学技術の振興と研究成果を通じた社会還元に寄与してまいります。