リサーチトピック

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【FIBER】杉本直己所長らの研究成果がNucleic Acids Research誌の表紙に選定されました

2017/07/19

先端生命工学研究所の杉本 直己所長・教授、建石 寿枝講師らの研究グループは、薬剤の分子設計に重要な核酸の四重らせん構造の安定化に関わる新しい相互作用を見出しました。この研究成果は、英国核酸化学誌「Nucleic Acids Research誌」の2017 年7月7日号の表紙に選定されました。
本研究成果は、2017 年4月にNucleic Acids Research誌に掲載が決定し、電子版で公開されており、2017年5月3日付けの日刊工業新聞の第1面で報道されています。

生体内での核酸(DNA:デオキシリボ核酸、RNA:リボ核酸)の標準的な構造は、二重らせん構造ですが、核酸は、四重らせん構造も形成することができます。四重らせん構造が形成されると、細胞寿命やがん化に関わるテロメアの伸長反応、さらには、感染したウイルスの増幅に関わる逆転写反応などの様々な生体反応が阻害されることが近年明らかになってきました。そのため、疾患関連の遺伝子に人為的に安定な四重鎖を作ることができれば、疾患発症を制御する薬剤の開発につながるため、四重らせん構造の安定性に関わる相互作用解析が行われてきました。

これまでに、杉本らの研究グループは、人工核酸をつかって四重らせん構造を安定に形成させ、HIV-1の増幅に関わる重要な逆転写反応を阻害する技術を構築しています。本研究では、人工核酸の安定化メカニズムを詳細に解析した結果、これまで注目されていなかった新しい相互作用(CH-π相互作用)によって、四重らせん構造が安定化されることが明らかになりました。
例えば、抗がん剤としての活用が注目されているテロメスタチンは、四重らせんに結合し、がん患者に特有のテロメア伸長反応を阻害します。近年、より副作用が少なく効率的な抗がん剤の開発を目指して、テロメスタチンを基本とした新規化合物の開発が世界的に行われています。本知見は、新規化合物の分子デザインにおいて、非常に有用であると考えております。

なお、本研究成果は、スロベニア国立NMRセンター Janez Plavecセンター長・教授、東京工業大学 金原数 教授、神戸大学 田中成典 教授らとの共同研究によるものです。

先端生命工学研究所(FIBER)は、今後も生命化学分野における研究開発を通じて、科学技術の振興と研究成果を通じた社会還元に寄与してまいります。

Nucleic Acids Research誌 のHP