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【FIBER】先端生命工学研究所が行った国際共同研究成果がネイチャー・パブリッシング・グループが出版する「Nature Structural & Molecular Biology」の電子版に掲載

2018/02/13

 この度、先端生命工学研究所(FIBER)の杉本直已所長と遠藤玉樹准教授の研究グループは、ケンブリッジ大学(英国)との共同研究(その他、エジンバラ大学(英国)、ハンガリー科学アカデミー(ハンガリー)、アイオワ大学(米国)との国際共同研究)を行い、その研究成果が、ネイチャー・パブリッシング・グループが出版する「Nature Structural & Molecular Biology」の電子版に掲載されました。

 今回の国際共同研究では、様々な生物に由来するホモ多量体タンパク質(同じタンパク質同士が複合体を形成するタンパク質)を網羅的に解析し、多くのホモ多量体タンパク質において、タンパク質の合成過程(翻訳反応)で後半に合成されるC末端側に複合体を形成する相互作用領域が存在していることを明らかにしました。
 研究グループは、前半に翻訳されるN末端側と、後半に翻訳されるC末端側に複合体形成領域を配置した人工タンパク質を用いてタンパク質の機能を調べる実験を行いました。その結果、N末端側に相互作用領域が存在する場合には、翻訳反応途中にタンパク質の凝集体が形成され、機能を失ったタンパク質ができやすいという結果を得ました。また、大腸菌を用いて様々なホモ多量体タンパク質を発現させると、N末端側に複合体形成領域を持つタンパク質の場合は、不溶性の凝集塊を形成しやすいことも見出しました。これらの結果から、C末端側にホモ多量体タンパク質の複合体形成領域が集中するように遺伝子が進化し、翻訳反応途中の不安定な構造状態でタンパク質同士が相互作用して凝集してしまわないように調節されていると考えられます。

 FIBERではこれまで、転写反応で産生されたメッセンジャーRNAが安定な高次構造を形成することで、翻訳反応が調節され得ることを示す研究成果を発表してきました。特に、翻訳反応の速度が変化することで、最終的なタンパク質の高次構造と機能が変化する可能性について提唱しています。今回の共同研究成果と、FIBERでのこれまでの研究成果を併せると、メッセンジャーRNAの構造やその熱安定性が細胞内の環境に応答して変化することで、タンパク質の構造や複合体の形成過程、ひいてはタンパク質の機能そのものが調節されるという機構が存在している可能性が考えられます。

 先端生命工学研究所では、このような核酸の構造が関与する遺伝子の発現調節機構を化学的に明らかにし、定量的な解析に基づいて議論していく研究を今後も遂行していきたいと思います。今後も、生命化学分野における研究開発を通じて、科学技術の振興と研究成果を通じた社会還元に寄与してまいります。

【掲載論文】
Cotranslational protein assembly imposes evolutionary constraints on homomeric proteins
(Nature Structural & Molecular Biology (2018), doi:10.1038/s41594-018-0029-5)