リサーチトピック

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【FIBER】髙橋講師、杉本所長の研究成果が英国王立化学会学術誌の中表紙に掲載

2015/11/26

このたび、先端生命工学研究所(FIBER)杉本直己所長と髙橋俊太郎講師による研究成果が、英国王立化学会の学術誌「Physical Chemistry Chemical Physics」の中表紙を飾りました。
細胞などの生命機能を担う生命分子は、熱や圧力といった物理的刺激でその構造を変化させます。最近、そのような構造変化から誘起される生命分子の機能発現効果が注目されつつあります。
先端生命工学研究所(FIBER)の杉本直己所長らの研究グループは、生命分子を構成する核酸の構造およびその安定性が核酸の機能に与える影響について、熱や圧力変化を利用した定量的な解析を進めてきました。
本研究ではシトシンが豊富なDNA配列で形成する四重らせん構造の一つであるi-motif構造が、圧力によって大きく安定化することを見出しました。一方その相補的な配列から形成されるグアニン四重らせん構造は不安定化することも明らかにしました。また、温度と圧力相図から、低い圧力ではシトシンおよびグアニンが豊富な配列は、それぞれが結合し二重らせん構造をとり、圧力が高くなるにつれ、二重らせん構造ではなくi-motif構造やグアニン四重らせん構造が優先的に形成されることも明らかになりました。i-motif構造とグアニン四重らせん構造は様々な遺伝子発現に関連しているとされており、これらの結果は、温度や圧力が変化する細胞内環境に応じて、遺伝子発現がダイナミックに制御されている可能性を示唆するものです。
この成果は、権威のある英国王立化学会の学術誌「Physical Chemistry Chemical Physics」に掲載され、掲載号の中表紙を飾りました。
今後は、細胞内の遺伝子の働きを圧力によって制御することや、生命の進化の過程において温度と圧力が担った役割を解明することが期待できます。
先端生命工学研究所(FIBER)では、生命化学分野における研究開発を通じて、科学技術の振興と研究成果を通じた社会還元に寄与してまいります。

Phys. Chem. Chem. Physの表紙

【掲載論文】
Pressure-dependent formation of i-motif and G-quadruplex DNA structures 
(S. Takahashi and N. Sugimoto, Phys. Chem. Chem. Phys., 2015, 17, 31004.)