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【FIBER】先端生命工学研究所の研究成果が米国化学会学術誌「Biochemistry」の表紙に選定され、論文が当該号に掲載されました

2020/12/07

このたび、先端生命工学研究所(FIBER)杉本直己所長、建石寿枝准教授とTeng Ye博士研究員(現在は中国Changchun University of Chinese Medicine講師)の研究グループは、神経変性疾患の細胞内で、細胞毒性と関連するRNA(リボ核酸)が集積するメカニズムを物理化学的観点から解明しました。この研究成果は、米国化学会学術誌「Biochemistry」の2020年6月号(6月2日号、9日号、16日号、23日号、30日号)の表紙に選定され、論文が当該号に掲載されました。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)やトリプレットリピート病などの神経変性疾患に関与する遺伝子(例えばC9orf72遺伝子)上の繰り返し配列から転写されるRNA( (GGGGCC)リピートなど)は、細胞内で集積し、細胞の毒性を示すタンパク質の凝集体を相互作用することが知られています。そのため、細胞内でのRNAの集積メカニズムを解明するための研究が世界的に行われてきました。

核酸の標準的な構造は二重らせん構造ですが、核酸は三重らせん、四重らせん構造のような非二重らせん構造も形成します。杉本所長らの研究グループは、細胞内を模倣した環境下において、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やトリプレットリピート病に関連する遺伝子から産生されるRNAの構造を解析しました。その結果、RNAが四重らせん構造を形成する環境下では、RNAの集積が促進され、二重らせん(ヘアピン)構造を形成する環境下では、RNAは集積しにくいことがかわりました。さらに、物理化学的解析の結果、このようなRNA集積の促進には、静電的相互作用によるRNAの四重らせん構造の安定化が重要であることが見出されました。この結果は、RNAの構造安定性を制御することで、神経変性疾患の原因となる細胞毒性を制御できる可能性があるとして、注目を集め、Biochemistry誌の表紙に取り上げられました。

先端生命工学研究所(FIBER)は、今後も生命化学分野における研究開発を通じて、科学技術の振興と研究成果を通じた社会還元に寄与してまいります。

【Biochemistryの掲載号】

Biochemistryへのリンクはこちらです。

【掲載された論文】

RNA G-Quadruplexes Facilitate RNA Accumulation in G-Rich Repeat Expansions                                           (Teng*, H. Tateishi-Karimata*, and N. Sugimoto (*These authors contributed equally),Biochemistry 2020, 59, 21, 1972–1980)