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【FIBER】先端生命工学研究所の四重らせんDNAの構造解析に関する国際共同研究論文が米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society誌」に掲載されました

2022/04/22

このたび、甲南大学先端生命工学研究所(FIBER)の髙橋俊太郎准教授、杉本直己所長・教授と英国レディング大学(University of Reading)などの研究グループとの国際共同研究論文が米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society(JACS)」誌に掲載されました。

核酸(DNAやRNA)は二重らせん構造が基本構造ですが、その一方で、四重らせんなどの特殊な構造も形成します。四重らせん構造は、グアニン四重らせん構造(G四重らせん)などがあり、配列や環境の違いでトポロジー(らせんの巻き方)が変化します。これらの四重らせんを形成する配列は癌や神経変性疾患に関連する遺伝子に多く存在します。そのため、四重らせんの構造を制御できる薬剤で、これらの疾患の予防や治療法の開発が進んでいます。しかしながら、薬剤開発に不可欠な分子構造の情報が乏しく、四重らせんに作用する合理的な薬剤設計が難しいのが現状です。

FIBERは核酸化学の国際共同研究拠点として海外の様々な研究機関との共同研究を行っており、本年度からは日本学術振興会研究拠点形成事業としても研究プロジェクトがスタートしております(ニュース記事参照)。今回の研究では、FIBERの高橋准教授、杉本所長・教授は英国レディング大学などの研究グループと共同で、ヒトテロメア由来のグアニン四重らせんDNAにルテニウム錯体と呼ばれる化合物が結合する様子を、X線結晶構造解析により原子レベルで解明することに成功しました。今回開発した化合物はルテニウム錯体と呼ばれる分子で、貴金属の一種であるルテニウムが有機化合物と結びついてできる分子で、複雑な三次元構造を形成できる特徴があります。今回開発したルテニウム錯体はアンチパラレル型と呼ばれるトポロジーのグアニン四重らせんを誘起し、らせん構造を強く安定化することが見出されました。それにより、DNA複製反応をこれまで報告されてきた他の化合物と比べても強力に制御することができました。本研究成果を元に癌や神経疾患などの新たな薬剤開発が期待できます。

【立体構造のわかりやすい動画】
https://www.youtube.com/watch?v=1UTaXm6WEO4

【JACS誌の掲載号】
JACS誌へのリンクはこちらです。

【掲載された論文】
”Ruthenium Polypyridyl Complex Bound to a Unimolecular Chair-Form G-Quadruplex”
K. T. McQuaid, S. Takahashi, L. Baumgaertner, D. J. Cardin, N. G. Paterson, J. P. Hall, N. Sugimoto, and C. J. Cardin, J. Am. Chem. Soc., 144, 5956-5964(2022)

先端生命工学研究所(FIBER)は、今後も生命化学分野における研究開発を通じて、科学技術の振興と研究成果を通じた社会還元に寄与してまいります。